保育士の残業時間は平均どれくらい?多い理由と働き方改革のヒント
2025/07/04
投稿者:編集部
保育士の残業時間は平均どれくらい?多い理由と働き方改革のヒント
保育士は子どもの成長を支える大切な役割を担っていますが、その一方で長時間労働やサービス残業、持ち帰り仕事などが問題視されています。勤務後も行事準備や書類作成が発生し、なかなか休息を取れないのが現状です。ストレスや負担を抱えながら働く保育士も少なくありません。
なぜ保育士には残業が多いのか、その実態や理由を探りつつ、働き方改革のヒントをご紹介します。実際にはイベントや行事が多く、書類業務を自宅に持ち帰るケースも頻繁に発生します。適正な賃金が支払われない問題も含めて、本記事では様々な角度から考察していきます。
働く環境によっては毎日のように21時近くまで対応を余儀なくされるケースもあり、保育士自身の健康やモチベーションの維持が課題になっています。行事や延長保育の増加、保護者からの突発的な要望への対応など、多面的な要因が絡み合っているのです。この記事では、残業の多さや要因について具体的に掘り下げ、対策のポイントをまとめてみます。
保育士の残業事情:どのくらい働いている?
まずは保育士の残業の実態を把握し、一般的な残業時間の目安や実際の声を見てみましょう。
保育士の残業時間は、平均すると月に数時間から10時間程度といわれる一方で、行事や園の方針によっては大きく増える場合があります。保育園によっては20時あるいは21時まで残ることも珍しくなく、子どもを預かる延長保育の対応で勤務時間が伸びがちです。さらに、残業が発生しても適切に賃金が支払われないサービス残業の問題に直面するケースも多いのが現状です。
実際には書類の作成や翌日の準備など業務の種類が多く、自主的という名目で残業を余儀なくされている保育士も少なくありません。これらが積み重なって精神的負担も増大し、保育の質や保育士自身の健康、日々のモチベーションにも影響を及ぼします。そのため、労働環境の改善や効率的なタスク管理が急務となっているのです。
平均残業時間と実際のエピソード
保育士の平均残業時間は、おおむね月4時間前後という統計がある一方、実際の職場環境によっては月20時間を超える例も存在します。年度末や大きな行事前などは準備や打ち合わせに追われることが多く、帰宅が夜遅くまでかかってしまう保育士も少なくありません。こうした残業の積み重ねが疲労やストレス増につながり、結果的に離職率の高さにも影響を与えているといえます。
実際に20時や21時までの延長保育が日常化している園では、日中の保育に加えて夜間の対応も多くなりがちです。そのうえ、翌日の保育計画や行事の準備は勤務時間中に終わらず、持ち帰り仕事や休日出勤で補わなければ追いつかないことも珍しくありません。子どもを預かる責任の重さだけでなく、裏方作業の膨大さもまた、保育士の残業を増やす大きな要因となっています。
持ち帰り仕事やサービス残業の現状
保育士が持ち帰り仕事をする主な理由の一つは、日々こなさなければならない書類作成や制作物の準備です。連絡帳の記入や行事用の衣装・掲示物の製作などは、子どもたちがいる保育時間中に全てを終わらせるのは難しく、結局自宅で作業を続けることが多くなります。さらに、残業申請しづらい職場の雰囲気や『子どもを想っての善意の残業』と捉えられる文化から、サービス残業に甘んじてしまうケースもあります。
サービス残業が慢性化すれば、保育士が正当な対価を得られず、労働意欲やモチベーションを下げる原因にもなります。園としても、人件費を抑えつつ業務を回す形になっているため、改善の動きが遅れる可能性があります。残業を自己犠牲として見過ごすのではなく、適正な対応を求める環境づくりが大切です。
保育士に残業が多くなる理由
なぜ保育士の業務は多忙を極め、残業が増えてしまうのか、主な要因を整理します。
保育士の仕事には、直接子どもと関わる保育業務だけでなく、イベント準備や書類作成、保護者対応など多岐にわたるタスクがあります。これらを勤務時間内にすべてこなすのは難しく、結果的に残業や持ち帰り仕事が発生してしまいます。子どもの安全と発達に責任を負う職業であるがゆえに、業務の質と膨大な量を同時に求められがちです。
特に行事の多い園や人手不足の園では、普段の保育に加えてイレギュラーな作業がどんどん増えるため、保育士一人あたりの負担が一気に高まります。こうした状況は労働環境を悪化させるだけでなく、保育士が抱えるストレスを増やし、早期離職のリスクをも高めてしまう可能性があるのです。現場で働く保育士にとっては、日々の業務をこなすのが精一杯で、改善策を議論する余裕すら確保できない場合もあります。
行事やイベント準備による業務の増加
保育園や幼稚園では、運動会や発表会、季節の行事などが頻繁に行われます。それぞれの行事には準備や練習が必要で、衣装や装飾物、進行表の作成といった雑多な作業が追加されます。ただでさえ日常の保育で忙しいなか、行事日程が重なるとさらに負担が増え、残業が常態化するケースが多く見られます。
また、行事に向けて子どもたちの自主性や成長を促したい思いが強いほど、成果を出すために細部までこだわることが増える傾向があります。結果として時間外に装飾作業やリハーサル準備を行う必要が出てくるため、保育士自身も休息時間を削りながら業務に取り組まざるを得なくなるのです。こうしたこだわりが質の高い行事運営につながる一方で、保育士の身体的・精神的負担が蓄積しやすいというジレンマをはらんでいます。
人手不足と業務の過密化
深刻な人手不足は、保育業界全体の大きな課題です。国として保育士の待遇改善を進めているものの、依然として求人倍率が高く、固定的な人材確保が難しい現場も多く存在します。人員が不足するとシフトの穴埋めや一人あたりの業務量が増え、加えて予想外の欠員対応なども重なり、結果的に残業が増加しやすくなります。
少ない人数で多くの子どもを見ていると、物理的にも時間的にも余裕がなくなってしまいます。書類作成や掃除、保護者対応なども通常保育の後に処理せざるを得ないため、どうしても勤務時間外の作業が常習化するのです。この状況を放置すれば、保育士の疲労がたまり離職が進むという悪循環に陥る可能性があります。
夜間保育・延長保育の増加と残業負担
近年では働く保護者の多様化に伴い、夜間保育や延長保育を実施する園が増えています。保育時間が長くなればなるほど、保育士が拘束される時間も増え、シフトの工夫だけでは補いきれない状況が出てきます。日中に加えて夜間や閉園後まで対応するとなると、定時内では収まりきらないことが多いのです。
さらに、夜間保育を利用する保護者への連絡帳記入や安全管理にも通常以上の神経を使う必要があります。延長保育が終わった後も翌日の準備が残っている場合、保育士の勤務終了時間はどうしても遅くなりがちです。その結果、慢性的な残業が避けられない構造になってしまうのです。
保育士の残業に関わる法律と残業代の問題
保育士の労働時間に関する法律や残業代の支払いをめぐる問題を理解することは、適切な働き方を考える上で重要です。
保育士も他の職種同様、『労働基準法』の下で労働時間や休憩時間、残業代の支払いなどが定められています。しかし実際の保育園では、子どもの世話や行事準備のために時間が取られてしまい、休憩時間をしっかり確保できないケースも少なくありません。また、残業代が申請しづらい職場文化が根付いていることもあり、未払い残業代が発生しやすい背景があります。
正当な残業代が支払われないと、保育士のモチベーションは下がり、離職や転職を検討するきっかけにもなります。一方で、過度な残業が状態化している職場は管理体制にも問題があると捉えられるため、改善の取り組みやICTの導入など、園全体で労働環境を見直す動きが求められています。こうした問題を放置せず、保育士をはじめとするスタッフが安心して働ける場を作ることが、子どもにとっても質の高い保育を受けられる基盤となるのです。
労働時間の定義と休憩時間の扱い
労働基準法には、1日8時間・週40時間を超えたら割増賃金を支払う義務があると明記されています。また、6時間を超える労働の場合には45分、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を設けなければならない決まりです。ところが保育園では、子どもから目を離す時間が取りにくいため、実際の休憩取得が難しいという問題があります。
実際にお昼寝の時間も、その間に書類作成や準備を進めなくてはならない園が多く、形だけの休憩というケースも少なくありません。こうした実情を踏まえ、保育士が安心して休めるシフトやサポート体制を整備することが、残業を抑える第一歩といえます。職場全体で休憩を確保しやすいルールや代替要員の配置が検討されることで、保育士の負担は大きく軽減されるでしょう。
未払い残業代請求のポイントと注意点
万が一、サービス残業や未払い残業が慢性化している場合、法的に認められた方法で請求することが可能です。具体的には、タイムカードや業務日報などの記録を集めて、実際の労働時間を証明します。証拠があることで、適正な残業代を請求できる可能性が高まります。
ただし、職場との関係を考えると請求に踏み切るのは勇気がいる行為です。そのため、労働組合や労働基準監督署などに相談しながら、冷静に手続きを進めることが大切になります。未払い残業の問題を表面化させないためには、残業代を適切に申請しやすい職場の仕組みづくり、あるいは働き方改革を進める努力が不可欠です。
残業時間を減らすための具体的な工夫
業務効率を高める工夫や組織的なサポート体制の構築によって、保育士の残業時間を削減できる可能性があります。
労働負担が重いと感じたとき、まず着手したいのは日々の業務における無駄の洗い出しです。パソコンやタブレットなどのICTシステムを導入し、書類作成を簡略化するだけでも残業時間の削減には効果があります。さらに、園全体できちんと話し合い、それぞれの業務を分担したり、サポートし合ったりする仕組みを作れると、保育士一人が抱える負担が大きく減ります。
また、個々の保育士がスケジュール管理や優先順位付けを考えることも重要です。保育活動だけに集中しすぎず、必要な業務を効率的にこなせるように計画を立てることで、残業を最小限に抑えられる可能性が高まります。こうした取り組みを続けていけば、職場全体の働きやすさや保育の質も向上していくはずです。
ICTシステムやテンプレート導入で業務効率化
手書きの書類や掲示板代わりのノートを電子化することで、日々の記録や情報共有がスピーディーに行えるようになります。特に連絡帳や保育計画書などは、テンプレートを活用することで作業の再現性が高まり、短時間で仕上げることが可能です。初期導入コストはかかりますが、長期的な残業削減や業務効率化につながりやすい方法です。
子ども一人ひとりの情報管理もシステム上で行えば、情報漏洩リスクも軽減されるメリットがあります。電子化が進めば、保育士同士での引き継ぎミスや記録漏れを防ぎやすくなり、結果として余計な手戻りや残業を減らせる効果が期待できます。特に規模の大きい園や社員数の多い現場ほど、情報共有のスピードアップが残業削減に大きく寄与するでしょう。
園全体の協力体制づくりと役割分担
どれだけICTが発展しても、最終的に重要なのは同僚とのチームワークです。職場全体で『業務をどう分担するか』『残業をどう減らすか』を共有し、保育士同士が助け合える文化を育てましょう。園長や主任保育士も含めて意識改革を行うことで、実際に残業を減らしながら高品質の保育を続けやすい環境が整備されます。
行事の準備でも、担当を細かく分けたり、お互いの進捗を把握したりすることで、無駄な重複作業や行き違いを防げます。具体的には、日々の情報共有ミーティングを定期的に行い、誰がどの仕事を担当するかをはっきりさせることが有効です。苦手な分野を得意な人に協力してもらうなど、互いに補完し合うことで、結果的に残業をせずに業務を回せる仕組みを実現できます。
タスク管理とタイムマネジメントのコツ
一日のうちにやらなければならないタスクを可視化し、優先度の高いものから処理していくことがタイムマネジメントの基本です。保育中でも、短い隙間時間を活用して簡単な作業を進めるだけで、後々の残業時間を削減できます。スマートフォンのアプリやメモ帳など、使いやすいツールでタスク管理を行うのも効果的です。
また、自分のスケジュールを定期的に見直し、効率の悪い作業があれば改善する姿勢が大切になります。行事の準備に過剰な労力を割いている場合は、既存の資料を再活用するなど、無理なく作業を短縮できる工夫を考えましょう。小さな改善の積み重ねが、働き方そのものを大きく変えていきます。
残業が少ない職場を探すためのポイント
就職・転職時に残業の少ない保育園や幼稚園を見極めるためのチェックポイントを整理します。
仕事とプライベートの両立を目指すうえで、残業が少ない職場を選ぶことは非常に重要です。求人情報を見るだけでなく、実際の園の様子を見学し、スタッフのきめ細かな体制や業務分担を目で確かめることも有効な方法です。実際に働く保育士たちの表情や雰囲気を感じ取ることで、求人票だけでは分からない職場環境を推し量ることができます。
また、面接や見学時にはシフトの組み方や行事の頻度、残業代の支給状況などを積極的に質問し、自分の働き方のイメージとマッチしているかを確認することが大切です。条件面だけでなく、職場内のコミュニケーションや保育理念にも注目し、長く安心して働ける環境かどうかを見極めましょう。自分の価値観と合わない職場で無理をすると、結局は早期離職につながる可能性が高いことを覚えておく必要があります。
求人情報や面接時に確認するべき項目
求人票には、勤務時間や休日だけでなく『残業はほとんどありません』といった旨が書かれている場合もあります。実際にそれが守られているかどうかは、面接で具体的な事例を尋ねることで確認しましょう。例えば、『月の残業時間の平均はどれくらいですか?』『持ち帰り仕事の量は?』など、実務に直結する質問をしてイメージが掴みやすくなります。
勤務シフトの仕組みや職場のサポート体制についても把握しておくと、忙しい時期の働き方をイメージしやすくなります。もし余裕があれば、現場のスタッフがどのように業務を行っているかを実際に見せてもらい、残業の仕組みや負担が分散されているかをチェックすると安心です。口頭での説明だけでなく、職場見学で得られる雰囲気やスタッフの疲弊度合いなども、判断材料として重要です。
行事数や保育方針を見極めるポイント
園によっては、行事を最小限にして子ども一人ひとりの保育に集中する方針を掲げているところもあります。一方で、年中行事やイベントを豊富に行い、子どもたちに刺激を与えることを重視する園も存在します。行事が多ければどうしても準備や練習の時間が増え、残業が発生しやすい傾向にあります。
自分がどのような保育を理想とするかを軸に、残業時間やワークライフバランスをどれだけ大切にしたいかを整理すると、園選びの指針がはっきりするでしょう。園の保育方針と自分の働き方の希望が合致していれば、自然と残業を抑えつつやりがいのある保育に取り組める可能性が高まります。互いのビジョンが合わない状態で入職すると、園の体制に適応できず、早期退職につながるリスクもあるため注意が必要です。
まとめ・総括
保育士の残業の実態と原因を踏まえ、よりよい働き方を実現するためのヒントを総括します。
保育士の残業は、行事準備や人手不足、延長保育など多角的な要因で増えてしまうのが現状です。さらに、未払い残業の問題や持ち帰り仕事による精神的な負担も、保育の質の維持と保育士の健康を脅かすリスクを高めています。こうした現実を放置すれば、保育士が疲弊し離職率が高まるなど、業界全体にとって悪循環が続くでしょう。
しかしながら、ICTシステムの導入や業務の分担、タイムマネジメントの徹底など、さまざまな工夫によって残業時間を削減することは可能です。また、求人情報や園の方針を見極めることで、残業の少ない職場を積極的に探す選択肢もあります。保育士一人ひとりが主体的に働き方改革を意識し、園全体で協力することで、より良い環境下で子どもたちと向き合える未来が築けるはずです。